労働安全衛生法に基づき、事業者に労働者に対するストレスチェックの実施が義務付けられ、ストレスチェック制度の適切な実施を図るために、「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」が示されています。
この制度は、労働者にストレスへの気づきを促すとともに、ストレスの原因となる職場環境の改善につなげることで、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)を図ることを目的としています。
労働者数50人以上の事業場は、1年以内ごとに1回、常時使用する労働者に対して、実施者(医師、保健師等)による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を実施します(労働者50人未満の事業場は、当分の間、努力義務)。
また検査の結果、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があるとされた労働者から申し出があった場合には、医師による面接指導を実施するとともに、医師の意見を聞き就業上の措置を講じなければなりません。
さらに、ストレスチェック結果の集団(職場や部署単位)ごとの集計・分析(集団分析)、およびその結果を踏まえた職場環境改善が事業者の努力義務となっています。
なお、厚生労働省の発表(令和5年)によると、メンタルヘルスに取り組んでいる事業場のうちストレスチェックを実施した事業場の割合は65.0%でした。
また、ストレスチェックを実施した事業場のうち69.2%が集団分析を実施していました。
ストレスチェック実施手順と留意事項
- ストレスチェックを受検しないことや結果の提供に同意しないこと、面接指導の申し出等を理由とする労働者への不利益取り扱いは禁止されています。
- 労働者の個人情報(ストレスチェックの結果等)は他の目的で使用することがないよう適切に保護しなければなりません。
- ストレスチェックの結果、面接指導結果報告書等については、事業者に記録保存義務等があります(5年)。
- 労働基準監督署に対し実施報告義務があります。
ストレスチェック制度における職場環境改善
不快で働きにくい職場環境は働く人にとってストレスになり、健康に影響を及ぼすことが考えられます。
ここでいう職場環境には、職場の物理的な環境(温度、換気、照明等)、レイアウト、労働時間、作業方法、人間関係、人事労務管理体制、疲労を回復するための施設、設備などさまざまなものが含まれます。
職場環境改善とは、こういった職場環境を改善することで、労働者のストレスを軽減しメンタルヘルス不調を未然に防ごうとするものです。
国際労働機関(ILO)は1992年の報告書で19の事業場のストレス対策事例から、職場レイアウトの改善、人間工学的改善、チームワークや小グループ活動の活性化、作業のローテーション化が効果的であったとしています。
ストレスチェックの結果から事業場や部署単位のストレス状況を把握するためのものとして、国が推奨する「仕事のストレス判定図」(健康リスク)があります。
これは、働く人の 健康と関係がみられる仕事の量的負担とコントロール、上司や同僚からの支援を集計・分析して職場塔のストレスの健康リスクを評価するものです。
さらに、業務内容や労働時間などの他の情報と合わせて、職場の健康リスクが高いと判断された場合には、職場環境等の改善が必要と考えます。
職場環境等の改善に当たっては、職場を働きやすくするために実効性の高い改善計画を職場のメンバーで話し合いながら立てて、改善を進めていきます。
国等の支援
- ストレスチェック制度実施マニュアル、医師による長時間労働面接指導実施マニュアル、ストレスチェック制度実施規程例等の関連情報は、厚生労働省ホームページまたは「こころの耳」からアクセスできます。
- ストレスチェック制度サポートダイヤルで、制度の実施方法などに関する相談に応じています。
→全国統一ナビダイヤル:0570-031050