労働衛生管理の基本的対策

①労働衛生管理体制の確立

労働衛生対策にあたっては、まず、作業環境、作業方法と労働者のかかわりを明らかにし、労働者に健康障害をもたらすことのない措置を講じ、快適な職場環境の形成を進めていくことが必要です。

このためには、経営トップの指揮の下、衛生管理者、産業医を中核とした労働衛生管理体制を確立し、労働衛生教育による労働衛生活動の正しい認識のもと、作業環境管理作業管理健康管理を進めていくことが必要です。

さらに、心身両面にわたる健康づくり、メンタルヘルス対策、過重労働対策も活力ある職場を維持するための重要な取組みとなります。
労働衛生管理が事業活動を展開する上で不可欠な要素であることを認識する必要があります。
そして、労働衛生対策を円滑かつ効率的に推進するために、総括安全衛生管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、産業 医等の責任の明確にして、労働衛生対策を推進していく組織を確立することが必要です。

加えて、各種の対策を有効なものにするためには、現場の労働者を含むすべての関係者が、積極的に労働衛生活動に参加することや衛生委員会等を効果的に運営することが大切です。

②作業環境管理

作業環境管理は、作業環境中の種々の有害要因を取り除いて、良好な作業環境を確保し、職場における労働者の健康障害を防止するための対策です。

作業環境管理にあたっては、作業環境測定を行い、その結果を適切に評価することが必要です。
そしてその結果から、局所排気装置など各種の設備の改善や適正な整備を行います。
また、これらの設備の維持管理等も良好な作業環境の維持のために大切です。

作業環境測定を作業環境測定機関に委託する場合にも、測定結果の評価とそれに基づく措置の実施を有効なものとするため、測定機関と十分な意思疎通を図ることが重要です。

③作業管理

有害な物質やエネルギーが人に及ぼす要因を適切に管理して、労働者への影響を少なくすることが作業管理です。

作業管理には、有害要因の発生防止・抑制、作業手順・作業方法の変更、身体への負担減少、保護具の適正使用などがあります。

④健康管理

健康管理は、健康診断およびその結果に基づく事後措置、健康測定結果およびその結果に基づく健康指導、メンタルヘルス問題まで含めた幅広い内容を有しています。

健康管理は、健康診断や健康測定を通じて労働者の健康状態を把握し、作業環境や作業との関連を検討することにより、労働者の健康障害を未然に防ぐこと、更に健康の増進につながるような積極的な内容であることが必要です。

これからの健康管理は、高年齢期になっても心身ともに健康で快適な生活が送れるよう、継続的かつ計画的に心身両面にわたる健康の保持増進を図ることが求められています。

⑤労働衛生教育

労働者の従事する作業が健康に与える影響や健康障害を防ぐための労働衛生管理体制、作業環境管理、作業管理および健康管理についての正しい理解が大切であり、この理解を深めることを目的とする労働衛生教育が重要です。

労働衛生教育は、雇い入れ時、作業内容変更時、危険有害業務に就かせるときなどに必ず行う必要がありますが、このような場合だけでなく、あらゆる機会を活用して計画的、継続的に実施することが重要です。

また、最近の急速な技術革新の進展、就業形態の多様化等に対応するためには、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者、作業主任者、職長等の労働衛生管理体制の中核となる者に対する能力向上教育や、危険又は有害な業務に現に就いている者に対する労働衛生教育が重要となっています。