④OSHMS導入に向けて

  1. 現在取り組んでいる安全衛生活動からスタートできます。
    OSHMSは基本的に従来の安全衛生活動から移行可能なシステムです。
    すでにOSHMSを実施している多くの事業場においても、それまでの安全衛生活動にリスクアセスメントやシステム監査などを付加することでシステムを構築できます。
    OSHMS指針はシステムの枠組みを示しているもので、具体的なシステムの中身は事業場の実情に応じて構築することを想定しています。
    このため、中小規模の事業場であっても、これまでの安全衛生活動の蓄積や推進体制などを考慮して、無理のないレベルからスタートし、PDCAサイクルを回す中で徐々に中身を充実していくことで、システムの構築を実現することができます。
  2. 文書化により情報が共有化され、各人の役割が明確になり、活動の継続が可能となります。
    OSHMS指針で作成を求めている文書は、いずれも日常の安全衛生活動を推進していく上で必要であり、役に立つ文書です。
    近年のように、分社化等の企業形態の変化、就業形態の多様化、雇用の流動化などが進む中にあって、安全衛生の知識や経験を確実に継承していくためには、安全衛生活動の計画や目標、実施状況などを文書化し、担当者が交代した場合の引き継ぎをしやすくしておくことが重要です。
    また、文書化によって、問題点や欠落点が発見しやすくなるというメリットもあります。
  3. リスクアセスメントにより危険又は有害の芽を確実に除去することが可能です。
    危険性または有害性の除去等の本質的な対策や、工学的な対策によるリスク低減がなされていないのに、注意喚起やマニュアルの整備などソフト対策をもって「リスクレベルが下がった」と評価したり、重大な災害に至るリスクの低減を後回しにして、改善のしやすい事項から優先的に対策を講じていくようでは、リスク管理の本質が見えなくなってしまいます。
    「リスクレベルが下がっているのに災害が減らない」という場合は、リスクアセスメントが適切に行われているか、危険または有害な芽が確実に除去されているかどうかを確認してみる必要があります。

厚生労働省のOSHMS指針は2019年7月に主に次のとおり改正されました。

  • 従来は事業場単位でOSHMSを運用することが原則でしたが、同一法人内の複数の事業場を併せて運用することも可能となりました。
    これは第三次産業など多店舗展開型企業では店舗単位でのOSHMSの運用が困難であり、本社が一括して管理することが現実的であることを踏まえたものです。
  • 近年、健康経営や働き方改革など労働者の心身の健康の確保・増進の重要性が高まっていることから、健康保持増進のための活動及び健康教育に関する事項を安全衛生計画に含めることが求められました。