高年齢労働者の安全対策の必要性

労働力人口に占める55歳以上(高年齢労働者)の割合は約30%です。

高年齢労働者の労働災害発生状況は、令和元年(2019)の労働者死傷病報告によると50歳以上の死傷者は全死傷者の5割以上を占め、死亡者にいたっては全死亡者の6割近くとなっています。
また、高年齢労働者は、若年労働者に比べ被災した場合に休業日数が長くなるなど、その程度が重くなるという傾向があります。

高年齢者雇用安定法の改正により、平成25年4月1日から、定年の廃止、65歳までの定年の引き上げまたは継続雇用制度の導入による高年齢者雇用確保措置が事業主に義務づけられ、また令和3年(2021)4月からは、70歳までの就業機会の確保が努力義務となるなか、一層の安全対策の充実が求められています。

高年齢労働者の特長としては、下記のようなことが挙げられます

  • 豊富な知識と経験を持っていることが多い
  • 業務全体を把握したうえでの判断力と統率力を備えていることが多い

また、一方で加齢に伴う心身機能の低下(脚力の衰え、バランス能力、歩行能力の低下等)からくる「転倒」「墜落・転落」等の労働災害の増加要因ともなっています。

今後、若年就業者の減少などにより高齢者の雇用確保が必要となり、労働者の高年齢化が一層進むものと予測されます。
高年齢労働者の労働災害防止は重要な課題となることが考えられます。

第13次災害防止計画では、高年齢労働者対策として、高年齢労働者に配慮した職場環境の改善や筋力強化等の身体機能向上のための健康づくり等の取り組み事例の収集・整理により、それらの普及が図られています。

令和2年(2020)3月には、「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」が公表され、事業者は高年齢労働者の就業状況や業務の内容等の実情に応じて、国や関係団体等による支援も活用して、実施可能な労働災害防止対策に積極的に取り組むよう努めることが求められています。