④化学物質をめぐる制度改正 <6>

安衛則、有機則、鉛則、四アルキル則、特化則の改正(特殊健康診断)

特化則等が制定されてから40年以上が経過し、化学物質による健康障害に関する事情が変わってきたことを受け、健康障害に係る健康診断項目について、安衛則、有機則、鉛則、四アルキル鉛則および特化則について以下のとおり改正が行われ、令和2年7月より施行された。

ヒトに対して尿路系の腫瘍を生じる可能性が指摘されているベンジジンおよびその塩等11物質について、オルト-トルイジン等に係る特殊健康診断項目との整合がとられた。(特化則の改正)

特別有機溶剤であるクロロホルム等9物質について、物質によって発がんの部位が異なる等の理由により専門家の検討を踏まえ、発がんリスクや物質の特性に応じた特殊診断項目の見直しがされた。(特化則の改正)

カドミウムまたはその化合物については、ヒトに対して肺がんを引き起こす可能性が指摘されたことと、腎臓機能障害を予防・早期発見するため、項目の追加が行われた。(特化則の加速)
また、四アルキル鉛の特殊健康診断の主目的を急性中毒予防から無機鉛と同様の長期的なばく露による健康障害の予防とし、鉛則の特殊健康診断の項目との整合がとられた。(鉛則、四アルキル鉛則の改正)

① 肝機能検査の見直し
オーラミン等11物質については、職業ばく露による肝機能障害リスクの報告がないことから、肝機能検査を行わないこととなった。
ただし、高濃度職業ばく露で肝機能障害のリスクを否定できない塩素化ビフェニル等については、二次健診で医師が認めた場合に、肝機能検査を実施することとなった。(特化則の改正)

② 赤血球系の血液検査の例示の見直し
ニトログリコール等6六物質については、臨床の現場であまり使われていない全血比重検査が血液検査の例示から削除された。(特化則の改正)

③ 腎機能検査の見直し
有機溶剤44物質について、医師が認めた場合に「腎機能検査」を実施できることとなっていること、また他の方法でスクリーニングできることから、腎機能障害の有無にかかわらず「尿中の蛋白の有無の検査」が必須項目から削除された。(有機則の改正)

④ 作業条件の簡易な検査の追加
労働者のばく露状況を確認し、スクリーニングするため、健康診断の必須項目に「作業条件の簡易な調査」が追加された。(有機測、鉛即、四アルキル鉛則、特化則の改正)

ベンジジンおよびその塩等3物質については、特殊健康診断の項目の見直しに合わせて、健康管理手帳および健康診断実施報告書の様式の改正が行われた。(安衛則の改正)