建設業では、死亡災害の上位を占める「墜落・転落災害」を中心に、「交通事故」「はさまれ・巻き込まれ災害」「崩壊・倒壊災害」等の重篤度の高い労働災害の防止に重点を置いていく必要があります。
下記のような労働災害防止対策が示されています。
(1)安全衛生管理体制の確立
建設業の特徴は、重層下請構造の下、所属の異なる労働者が同一の場所で作業し、また短期間に作業内容が変化するという形態にあります。
- 元方事業者においては、統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者等を選任し、責任と権限を明確にして、工事現場における統括管理を実施すること。
- 関係請負人においては、元方事業者との連携を強化し、統括安全衛生責任者との連絡など安全衛生責任者の職務の徹底を図ること等により、元方事業者の講じる措置に応じた措置を講じること。
- 工事現場を管理する本店、支店、営業所等による工事現場に対する指導援助を的確に行うこと。
(2)リスクアセスメントの確実な実施と労働安全衛生マネジメントシステムの導入
工事現場における安全衛生水準の向上を図るため、労働安全衛生関係法令の遵守だけでなく、リスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施と、事業者の自主的能力に応じた労働安全衛生マネジメントシステムの導入を推進し、自主的な安全衛生活動を活性化させることが必要です。
建設業労働災害防止協会では、建設業の特徴を踏まえた「リスクアセスメント建設業版マニュアル」の普及、「建設業労働安全衛生マネジメントシステムガイドライン:コスモスガイドライン」によるシステム構築支援などを行っています。
(3)墜落・転落災害など重篤度の高い労働災害を防止するための対策の徹底
1.墜落・転落災害防止対策
- 作業主任者等による安全帯、保護帽等の使用状況の監視
- 墜落のおそれのある作業における、安全な作業床を設けるか安全ネットの設置。
- 高さ2m以上の開口部、作業床の端等には、高さ90cm以上の手すり、囲い等および滑動防止措置を講じた覆い等の設置。
- 足場の組み立てまたは解体作業における、手すり先行工法等の導入
2.建設機械・クレーン等の災害防止
- 車両系建設機械、基礎工事用建設機械、不整地運搬車、高所作業車、クレーンなど機械ごとに適切な労働災害防止対策を講じることが必要。
令和6年度全国安全週間実施要綱においても、下記のような「建設業における労働災害防止対策」が示されています。
一般的事項
- 「木造家屋等低層住宅建築工事墜落防止標準マニュアル」に基づく足場、屋根・屋上等の端・開口部、はしご・脚立等からの墜落・転落防止対策の実施、フルハーネス型墜落制止用器具の適切な使用
- 足場の点検の確実な実施、本足場の原則使用、改正「手すり先行工法等に関するガイドライン」に基づく手すり先行工法の積極的な採用
- 職長、安全衛生責任者等に対する安全衛生教育の実施
- 元方事業者による統括安全衛生管理、関係請負人に対する指導の実施
- 建設工事の請負契約における適切な安全衛生経費の確保
- 輻輳工事における適正な施工計画、作業計画の作成及びこれらに基づく工事の安全な実施
- 一定の工事エリア内で複数の工事が近接・密集して実施される場合、発注者及び近接工事の元方事業者による工事エリア別協議組織の設置