③振動障害の防止対策

振動障害は、振動工具の使用に伴って発生する振動が人体に伝播することによって多様な症状を呈する症候群です。
振動障害防止のためには、振動の周波数、振動の強さ及び振動のばく露時間により、手腕への影響を評価し、対策を講ずることが有効とされています。

このため、厚生労働省では、国際標準化機構(ISO)等が取り入れている「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」と「振動ばく露時間」で規定される1日8時間の等価振動加速度実効値の考え方などをもとに、振動障害の予防対策として平成21年7月10日付けで下記の指針等を公表しています。

  1. チェーンソー取扱い作業指針について
  2. チェーンソー以外の振動工具の取扱い業務に係る振動障害予防対策指針について
  3. 振動工具の「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」の測定、表示等について
  4. 振動障害総合対策要綱
  5. 振動工具取り扱い作業者等に対する安全衛生教育の推進について

なお、「振動障害総合対策要綱」については、平成24年度までを計画期間としていましたが、「今後の振動障害予防対策の推進について」により、引き続き要綱による対策内容を推進するとともに、以下の点についても、効果的な予防対策を講じることとされました。

  • 振動障害予防対策に係る危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)等の推進について
  • 振動工具に係る危険性情報等の通知の推進について
  • 振動工具の適切な点検・整備等について

 

振動障害の予防対策の概要は、以下のとおりです。

ア.振動工具を使用する事業者が講ずべき措置

a.振動工具の選定基準と点検整備
使用する工具は振動や騒音ができる限り少なく軽量なものを選び、工具のメーカー等が取扱説明書等で示した時期および方法により定期的に点検整備し、常に最良の状態に保つようにする。
また、「振動工具管理責任者」を選任し、点検・整備状況を定期的に確認し、その状況を記録する。

b.作業時間の管理

  1. 振動業務とそれ以外の業務を組み合わせて、振動業務に従事しない日を設けるよう努める。
  2. 使用する工具の「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」を表示、取扱説明書等により把握し、当該値と1日当たりの「振動ばく露時間」から、通達に示す方法により1日8時間の等価振動加速度実効値を求め、通達に定める振動ばく露時間の抑制等の措置を講ずる。
  3. 使用する工具および業務に応じて、一連続の振動ばく露時間の制限または一連続作業後の休止時間を設ける。

c.工具の操作方法および作業方法
工具の操作方法については、ハンドル等以外の部分は持たない、また、ハンドル等は軽く握り、かつ、強く押さえない、防振手袋を利用するなど余分な振動のばく露を避ける。
作業方法については、工具をスプリングバランサー等により支持するなど、工具を支える力を極力少なくし、筋の緊張を持続させることのない方法を工夫する。

d.健康診断の実施およびその結果に基づく措置
振 動業務に従事する労働者に対する健康診断の実施など適切な健康管理については、「振動工具(チェーンソー等を除く)の取扱い等の業務に係る特殊健康診断に ついて」、「振動工具の取扱い業務に係る特殊健康診断の実施手技について」および「チェーンソー取扱い業務に係る健康管理の推進について」に基づき実施す る。

e.安全衛生教育の実施
労働者を新たに振動業務に就かせ、または労働者の取り扱う振動工具の種類を変更したときは、当該労働者に対し、振動が人体に与える影響、日振動ばく露量に基づくばく露許容時間等の工具の適正な取扱いおよび管理方法についての教育を行う。

 

イ.振動工具を製造または輸入する事業者等が講ずべき措置

a.主に労働者が取り扱う振動工具について、「周波数補正振動加速度実効値の3軸合成値」を測定・算出する。

b.測定・算出した3軸合成値を振動工具に表示する。

c.取扱説明書、カタログ、ホームページ等において次の措置を講じる。

  1. 3軸合成値、振動測定の準拠規格、振動工具の重量等を明記する。
  2. 振動工具の使用者が適切に日振動ばく露量に基づく対策を講ずることができるよう、1日当たり振動ばく露限界時間の算出方法等の説明を記載し、または記載したパンフレットを添付する。
  3. 振動工具の製造時の振動加速度レベルを劣化させないための点検・整備について、その具体的な時期、その対象となる工具の状態、その方法等を示す。