①心身両面の健康保持増進

本格的な少子高齢化社会を迎える中、労働者がいつまでも健康で、その能力を十分に発揮できるということは、労働者にとっても大変重要なことです。

しかしながら、定期健康診断の結果をみると、年々有所見者の割合が増加しており、中でも血中脂質検査、血圧、肝機能検査などの項目で有所見率が高い傾向にあります。

これらの所見は、健康管理が適切に行われていないと増悪し、脳血管疾患や虚血性心疾患などを引き起こすことにもなりかねません。
これらの所見を予防し、健康の保持増進を図るためには、自分の健康を自ら管理するとともに、職場の健康管理が重要です。

また、健康寿命とともに職業生涯が延伸し、高年齢労働者が職場においてより大きな役割を担うようになり、高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境づくりや労働災害の予防的観点から、健康づくりを推進していくことが求められています。

労働者の健康を確保し、ひいては、身体機能低下がもたらす労働災害の防止を図ることを目的として、事業場における健康保持増進のために様々な施策が展開されています。

国は「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(THP指針)を策定し、心身両面にわたる健康保持増進対策を推進しています。(THP:トータル・ヘルスプロモーション・プラン)

令和3年2月、昨今の産業構造の変化や高齢化の一層の進展、働き方の変化を踏まえて前年度に続いてTHP指針の見直しが行われ、令和3年4月1日から改正THP指針が適用されています。

令和元年度と令和2年度のTHP指針改正により、健康保持増進措置の対象の考え方には、生活習慣上の課題を有する労働者個人を対象とした、個々の健康状態の改善を目指す「ハイリスクアプローチ」と、課題の有無にかかわらず労働者を集団と捉え、事業場全体の健康状態の改善を目指す「ポピュレーションアプローチ」の2つの視点が盛り込まれました。
それらのアプローチは対象者、具体的な活動内容、期待される効果等の特徴を理解して、効果的に組み合わせて取り組むことが求められます。
労働者の中には、無関心な者が一定数存在すると考えられるので、成果を上げる上では企業や事業場として労働者の健康保持増進を重視し、積極的に取り組む企業文化・風土を醸成することが望まれます。
労働者が高齢期を迎えても働き続けるには、心身ともに健康が維持されていることが必要です。
そのためには高齢期の健康悪化を防ぐ中長期的・予防的な観点から、若年期からの運動習慣、歯・口腔の健康維持等の健康保持増進に取り組むことが有効です。
行動の習慣化、数値や指標を活用した身体状況の見える化によって、若年期から労働者自身の「自覚」を促し、健康保持増進に自発的に取り組んでもらえるような取り組みを行ないましょう。

また、THP指針は事業場規模、事業内容、年齢構成等の事業場の特性に合った健康保持増進措置の内容を検討し、実施できるように見直し、P(計画)D(実行)C(評価)A(改善)サイクルの各段階で、事業場が取り組むべき項目を明確にし、健康保持増進措置の「進め方」を規定する内容に見直しが行われています。