騒音は、人に不快感を与えるほか、会話や連絡合図などを妨害し、安全作業の妨げになることも多く、生理機能にも影響し、騒音性難聴の原因となるので、できるだけ騒音を抑制し、作業者の騒音ばく露を少なくしなければなりません。
騒音ばく露によって引き起こされる疾病に、騒音性難聴があります。
騒音性難聴には、一時的に聴力が低下する場合と永久的に聴力が低下する場合とがあります。
このうち一時的なものは、騒音ばく露後の短時間で起こり、可逆的(回復する)なもので、聴覚の疲労現象であるともいえます。
騒音性難聴は、周波数4,000Hz付近の聴力が最初に低下してきます。
一方、会話音域は通常500Hzから2,000Hz程度ですから聴力低下は自覚されませんが、聴力低下が進行してこの音域まで及ぶと会話に支障が出てきます。
騒音性難聴は、騒音の音圧レベルが高いほど、ばく露時間が長いほど、周波数が高いほど起こりやすいので、できるだけ下記の事項に留意することが基本的な対策となります。
- 騒音レベルを低くすること
- 騒音ばく露時間を短くすること
- 周波数を低くすること
特に聴力の永久損失は、現段階では治療方法がないので、適切な対策を講じ、騒音性難聴を防止する必要があります。
以上のように、騒音性難聴は長期間にわたる騒音ばく露により発症すること、聴力低下が進行してからでは回復されないとされていることから、労働衛生管理による騒音ばく露の低減と初期症状の早期発見は欠かせません。
令和5(2023)年4月に「騒音障害防止のためのガイドライン」が改訂され、労働安全衛生規則第588条に定める8屋内作業場(騒音測定が義務づけられている作業場)および騒音レベルが高いとされる52作業場を対象に、作業環境管理、作業管理、および健康管理により騒音ばく露低減化を図るとともに、騒音障害防止対策の管理者による組織的な対策の取り組みおよび管理者に対する教育をが定められました。
また、手持ちで動力工具など騒音源が移動する場合にも対応し、上記52作業場については、必要に応じて、作業環境測定に代えて個人ばく露測定による等価騒音レベルの測定を行うことができるようになりました。
ガイドラインに示されている具体的な騒音障害防止対策は次のとおりです。