本格的な少子高齢化社会を迎える中、働く人がいつまでも健康で、その能力を十分に発揮できるということは、労働者にとっても大変重要なことです。
しかしながら、定期健康診断の結果をみると、年々有所見者の割合は長期的に増加傾向であり、中でも血中脂質検査、血圧、肝機能検査などの項目で有所見率が高い傾向にあります。
これらの所見は、健康管理が適切に行われていないと増悪し、脳血管疾患や虚血性心疾患などを引き起こすことにもなりかねません。
これらの所見を予防し、健康の保持増進を図るためには、自分の健康を自ら管理するとともに、職場の健康管理が重要です。
また、健康寿命とともに職業生涯が延伸し、高年齢労働者が職場においてより大きな役割を担うようになり、高年齢労働者が安心して安全に働ける職場環境づくりや労働災害の予防的観点から、健康づくりを推進していくことが求められています。
労働者の健康を確保し、ひいては、身体機能低下がもたらす労働災害の防止を図ることを目的として、事業場における健康保持増進のために様々な施策が展開されています。
国は「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」(THP指針)を策定し、心身両面にわたる健康保持増進対策を推進しています。(THP:トータル・ヘルスプロモーション・プラン)
健康保持増進措置は、労働者が自主的・自発的に取り組むことですが、その自助努力を支援する制度や、適切な生活習慣が継続して行える環境づくりなど、事業者の積極的な健康づくりを推進する取組みが必要です。
そこで、THP指針では、事業場内の健康保持増進措置を適切かつ有効に行うための基本となる実施方法と留意すべきポイントを示しています。
- THPの推進には、中長期的な視点で安全衛生計画を立て、事業者による方針表明から結果評価までをPDCAサイクルに沿って取り組むことが重要である。
この際、衛生委員会等に計画を付議し、推進体制を整備することが望ましい。 - 措置内容は、「健康指導」と「それ以外の取組み」の大きく2つに分けられており、「健康指導」については、「労働者の健康状態の把握」と「把握した労働者の健康状態を踏まえ運動指導や保健指導などの実施」の2ステップで行う。
- 対象者については、健康障害を起こす危険因子を有する労働者を特定して健康状態の改善を目指す「ハイリスクアプローチ」だけでなく、対象を集団全体に広げて危険因子の有無に関係なく事業場全体の健康状態の改善を目指す「ポピュレーションアプローチ」を組み合わせて行うことが効果的である。
- 健康づくりに無関心な人にも参加できしてもらうような健康づくりや仕組みづくりの工夫が大事である。
- 労働者の高齢化を見据えた若年期からの運動の習慣、歯・口腔の健康維持等の健康保持増進に取り組むことが有効である。
- 健康情報を含む労働者の個人情報は「要配慮個人情報」として慎重に扱うことが極めて重要である。