(1)パート、アルバイト、契約社員の安全衛生管理
労働者の安全衛生については、労働者の属性にかかわりなく等しく確保されるべきものであり、パート、アルバイト、契約社員に対して、危害防止措置を講じたり、安全衛生教育を行うことにより、その安全と健康を守ることは雇用する事業者の責務になります。
通常は、一般健康診断(雇い入れ時の健康診断、1年以内ごとに1回の定期健康診断、深夜業を含む業務に従事する労働者への配置替え時および6月以内ごとに1回の定期健康診断)については、常時雇用する労働者が対象になります。
ただし、以下の2つの要件を満たすパートタイム労働者等には、一般健康診断を行わなければなりません。
- 期間の定めのない労働契約により使用されている者であること。
ただし、期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者ならびに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。 - 1週間の労働時間数(所定労働時間数)がその事業場において同種の業務に従事する正社員の3/4以上であること。
なお、1週間の労働時間がおおむね1/2以上である者に対しても一般健康診断を行うことが望ましいとされています。
(2)派遣労働者の安全衛生管理
派遣労働者の安全衛生の確保については、原則として派遣労働者と労働契約関係のある派遣元責任者が負うことになります。
ただし、派遣労働者の危険または健康障害を防止するための措置など、派遣元事業者に責任を問えない事項や派遣労働者の保護の実効を期する上から派遣先事業主が責任を負うことが適切な事項については、派遣先事業主が責任を負うことになっています。
<派遣先事業主が責任を負うべき主な事項>
- 派遣労働者を含めた安全衛生管理体制の確立
- 危険または健康障害を防止するための措置の適切な実施
- 危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)およびその結果に基づく措置の実施
- 安全衛生教育(作業内容変更時教育、特別教育)
- 安全な作業の確保(就業制限業務に係る資格の確認、作業マニュアルの作成等)
- 特殊健康診断の実施
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なお、一般健康診断、雇い入れ時の安全衛生教育は派遣元事業主の実施事項ですが、「派遣先が講ずべき措置に関する指針」において、派遣先事業主は、派遣元事業主がこれを適切に実施できるように派遣労働者が従事する業務に関する情報の提供など、必要な協力を行うこととされています。
(3)請負事業者の労働者の安全管理
請負事業者については、その労働者の安全や健康を守るのは基本的には請負事業者の責務になりますが、複数の事業者による作業が同一の場所で行われる場合には、混在作業による労働災害を防止するため、元方事業者に関係請負人を含めた労働者に労働災害防止のための指導を行う責務が与 えられています。(労働安全衛生法29条)
特に、建設業、造船業の場合、元方事業者(特定元方事業者)には、協議組織の設置、作業間の連絡調整、作業場所の巡視などの措置を行うことが義務づけられています。(労働安全衛生法30条)
また、製造業(造船業を除く)の場合も、元方事業者に作業間の連絡調整等の措置が義務づけられています。(労働安全衛生法30条の2)
製造業(造船業を除く)における元方事業者による安全衛生管理については、「製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針」が示されており、鉄鋼業、化学工業、自動車製造業については、実施のための具体的なマニュアルが作成されています。
令和5年(2023)4月より、労働者以外の者(危険有害作業をする請負人(一人親方、下請業者)、同じ作業場所にいる一人親方、他社の労働者等)に対しても労働者と同じ保護措置を実施することが義務づけられています。