③熱中症予防対策

ア.作業環境管理

  1. WBGT基準値を超え、または超えるおそれのある作業場所(以下「高温多湿作業場所」)においては、発熱体と労働者の間に熱を遮ることのできる遮へい物等を設けること。
  2. 屋外の高温多湿作業場所においては、直射日光ならびに周囲の壁面および地面からの照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設けること。
  3. 高温多湿作業場所に適度な通風や冷房を行うための設備を設けること。
  4. 高温多湿作業場所の近隣に冷房を備えた休憩場所または日陰などの涼しい休憩場所を設けること。
    また、休憩場所は臥床することのできる広さを確保すること。
  5. 高温多湿作業場所またはその近隣に氷、冷たいおしぼり、水風呂、シャワー等の身体を適度に冷やすことのできる物品および設備を設けること。
  6. 水分および塩分の補給を定期的かつ容易に行うことができるよう高温多湿作業場所に飲料水の備え付け等を行うこと。

イ.作業管理

  1. 作業の休止時間および休憩時間を確保し、高温多湿作業場所の作業を連続して行う時間を短縮すること、身体作業強度が高い作業を避けること、作業場所を変更することなどの熱中症予防対策を、作業の状況等に応じて実施するよう努めること。
  2. 計画的に、熱への順化期間を設けることが望ましいこと。
  3. 自覚症状以上に脱水状態が進行していることがあること等に留意の上、自覚症状の 有無にかかわらず、水分および塩分の作業前後の摂取および作業中の定期的な摂取を指導するとともに、労働者の水分および塩分の摂取を確認するための表の作 成、作業中の巡視における確認などにより、定期的な水分および塩分の摂取を図ること。
  4. 熱を吸収し、または保温しやすい服装は避け、透湿性および通気性の良い服装を着用させること。
    なお、直射日光下では通気性の良い帽子等を着用させること。
  5. 定期的な水分および塩分の摂取に係る確認、労働者の健康状態を確認し、熱中症を疑わせる兆候が表れた場合において速やかな作業の中断等必要な措置を講ずること等を目的に、高温多湿作業場所の作業中は巡視を頻繁に行うこと。

ウ.健康管理

  1. 健康診断の項目には、糖尿病、高血圧症、心疾患、腎不全等の 熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾患と密接に関係した血糖検査、尿検査、血圧の測定、既往歴の調査等が含まれていることおよび異常所見があると診 断された場合には医師等の意見を聴き、当該意見を勘案して、必要があると認めるときは、事業者は、就業場所の変更、作業の転換等の適切な措置を講ずること が義務づけられていることに留意の上、これらの徹底を図ること。
  2. 高温多湿作業場所で作業を行う労働者については、睡眠不足、体調不良、前日等の飲酒、朝食の未摂取等が熱中症の発症に影響を与えるおそれがあることに留意の上、日常の健康管理について指導を行うとともに、必要に応じ健康相談を行うこと。
  3. 作業開始前に労働者の健康状態を確認すること。
    作業中は巡視を頻繁に行い、声をかけるなどして労働者の健康状態を確認すること。
    また、複数の労働者による作業においては、労働者にお互いの健康状態について留意させること。

エ.労働衛生教育

高温多湿作業場所において作業に従事させる場合には、作業を管理する者および労働者に対し、あらかじめ次の事項について労働衛生教育を行うこと。

  1. 熱中症の症状
  2. 熱中症の予防方法
  3. 緊急時の救急処置
  4. 熱中症の事例

オ.救急処置

  1. あらかじめ、病院、診療所等の所在地および連絡先を把握するとともに、緊急連絡網を作成し、関係者に周知すること。
  2. 熱中症を疑わせる症状が現れた場合には、救急処置として涼しい場所で身体を冷やし、水分および塩分の摂取を行うこと。
    また、必要に応じ、救急隊を要請し、または医師の診察を受けさせること。

 

熱中症の症状と分類
分類 症状 重症度
Ⅰ度 めまい・失神—「たちくらみ」のこと。「熱失神」と呼ぶこともある。

筋肉痛・筋肉の硬直—筋肉の「こむら返り」のこと。「熱麻痺」と呼ぶこともある。

大量の発汗

Ⅱ度 頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感—体がぐったりする、力が入らない など。従来「熱疲労」と言われていた状態。
Ⅲ度 意識障害・痙攣・手足の運動障害–呼びかけや刺激への反応がおかしい。ガクガクと引きつけがある、真っ直ぐに歩けない など。

高体温—体に触れると熱いという感触がある。従来「熱射病」などと言われていたものが相当する。